人気の北欧デンマーク家具~日本の影響を受けて生まれた様式美~

20世紀中葉に優れた家具工藝を生み出したデンマークの家具作品を、谷﨑一心氏の油彩作品とともに展示している『北欧デンマークのヴィンテージ家具工藝展』に行ってきました。

Scandinavian Danish Vintage Crafts Furniture - 北欧デンマークのヴィンテージ家具工藝展 【2022.12.22 Thu.-2023.2.4 Sat. @Luca Scandinavia】

            20世紀デンマーク家具の誕生

20世紀。それまで主流だった豪華なヨーロッパ貴族趣味へのカウンターカルチャーとして、加飾せず、ゴージャスさを排除した「直線的でシンプル」、「合理的でモダン」なデザインを生み出したと言われているデンマーク家具。

これは、20世紀初頭のドイツで生まれたバウハウスや、オランダのデスティルの考え方に習い、そして、我が国「日本」の様式からも強い影響を受けたことにより、木材のエッセンスを加えて、デンマークならではの家具様式を生み出したそう。

当時生み出されたデザインは輝きを失わず、この21世紀においても、ひとつの大きなインテリア様式として多くの人に愛される人気の家具に。日本でも、大型チェーン店をはじめ、北欧家具を扱うお店をよく目にするようになりました。

            伝世してゆくデンマーク家具

今回展示されている20世紀中葉に作られたデンマークの家具の多くは、強靭な天然木が用いられているため簡単には壊れない素材ではあるものの、より線を細くしたり、無理な角度を強いるなど、デザイン性を先行させた傾向もあって、必ずしも質実剛健というわけにはいかないようです。

経年による木材の「痩せ」も生じており、使用する際には家具を労わる必要がありますが、デンマーク家具は直しながら使うことで、数百年は持つであろうと言われているんだとか。

何百年と時を経ても、はるか遠い国で誰かに愛されながら使われる。ヴィンテージ家具だからこそできる素敵な出会いです。

デンマーク家具の第一人者である『 Kaare Klint / コーア・クリント 』の家具たち

籐編みの背もたれがジャンヌレを彷彿させ、一番最初に目がいった椅子。

 

『市長の椅子 Mayor’s chair』

円と半円から構成される「市長のための椅子」。

コーア・クリントによる指導のもと、Ejner Rasmussen によって図面が描かれ、Rud. Rasmussen 工房によって極少ロットのみ作られたモデルです。同モデルがデンマークのカールスバーグ募金によってコレクションされています。

 

こちらは、今回の展示の顔ともいえる、タイトロールの真下に置かれている椅子。前脚と後ろ脚のちょっとしたデザインの違いなど、スッキリとした中にもこだわりを感じました。これから見る“展”の中では一体どんな家具たちが集っているのか、一気に中に入るのが楽しみに。

 

『プロトタイプとされるファーボーチェア』

デンマーク、フェン島のファーボーミュージアム、メインフロアのために1914年にデザインされたファーボーチェアのプロトタイプとされるモデル。古代ギリシャの墓標に彫られた椅子Klismosから着想を得てデザインされたといわれています。

 

『エストループルンドのための特注家具』

 

椅子は、先に紹介した初期オリジナルの「ファーボーチェア」のモデルを原型に、2年後の1916-1917年頃に作られた変形モデルです。初期のファーボーチェアと同じく、オーク材のパール杢が用いられています。後年のファーボーチェアが笠木の下を籐で張られているのに対し、こちらは木製パネルで張込まれ、シートにはニジェールレザーが用いられています。

 

中央のテーブルは、椅子と同じオーク材のパール杢で作られた「ゲームテーブル」。天板には2枚の引き出し式リーフを備えており、天板面積を拡張できます。輪郭が彫られた脚と縁、真鍮のシューズが特徴です。

 

サイドにあるのは、「オークバールトレイテーブル」。輪郭が彫られたパール杢のフレームに、乗せるだけの真鍮トレイとシューズがアクセントとなっています。

若きKaare Klint / コーア・クリントによってデザインされたこれらの家具シリーズは
クリントのキャリアの中でも初期に設計されたもののようで、
彼の若々しい柔軟さが発揮され、当時としては新しく、
よりシンプルなスタイルを求める工芸作家としての強い探求心が示されていると言われています。

この家具シリーズは、ほぼ1点ものとして作られたもので、
コーア・クリントの作品としては世にほとんど知られていませんでしたが、
近年のオークションにて初めて売り立てられ、現在そのいくつかを谷﨑氏がコレクションしているそう。

 

コーア・クリントはデンマーク家具工藝の歴史上、極めて中心的な人物と考えられているそうで、
デンマーク美術アカデミーの教授として、オーレ・ヴァン シャーハンス・ウェグナーなど、
多くの次世代デザイナーの基盤を築きました。

次世代デザイナーとして活躍した 『 Hans J. Wegner / ハンス・ウェグナー 』

第一印象、”ひつじのショーンに似てる…!!” 。

そんなこと思いながらふわっと見ていた椅子ですが、パンフレットの説明を読んで見ると…

収納はもちろんハンガーの役目まであって、ちゃんとこの形状には意味があったんです。驚きました。

 

『 ジャケットや小物を仕舞う収納家具“ヴァレットチェア” 』

1942年に考案された名作椅子“ヴァレットチェア”。

家具職人のハンス・ウェグナー、建築学教授もスティーン・アイラー・ラスムセン、デザイナーのポー・ポイエセンの3人が僅か2日間で完成させたと言われています。

笠木はジャケットを掛けられるハンガー、座を起こせばパンツやベルト、ネクタイが掛けられ、座の下のボックスには小物も収納できるというユニークな椅子。

数百年後も誰かに愛されるデンマーク家具

20世紀初頭から戦前ごろまでに作られた、デンマーク家具工藝としては黎明期にあたる貴重な作品たち。
アーティストの谷﨑さんが厳選した、貴重希少なこのコレクションの数々を間近で見れる贅沢な空間でした。

何気なく置かれたフラワーベースや絶妙な位置にある照明も北欧ヴィンテージで統一されていて、とくに夜に伺うと照明のライトアップが家具たちを浮きだたせ、“展”とは思えないほどムードのあるいい雰囲気に。

悠々の時を経て日本にやってきたヴィンテージ家具の数々にうっとりした時間でした。

ルーフミュージアムでの企画展「北欧デンマークのヴィンテージ家具工藝展」は今週土曜までの開催です。お時間がある方は是非行かれてみてくださいね。

 

(→写真は、WTで扱っているヴィンテージ家具の「ジャンヌレの椅子」と同じ年代だった唯一の椅子)

【引用元】

Lurf MUSEUM / ルーフミュージアム内のパンフレット

【写真元】

・北欧デンマークのヴィンテージ家具工藝展

 

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