4月6日公開、映画「フィシスの波紋」〜京都からケルトへ・美と祈りの文様、オンライン講座を受けて〜

2024年4月6日から劇場で公開される映画「フィシスの波文」のプロデューサーである河合早苗さんと、芸術人類学者で特にケルト文化の研究をされ著書もたくさん出版されている鶴岡真弓先生のオンライン講義「京都からケルトへ・美と祈りの文様ー映画<フィシスの波文>に学ぶ」(朝日カルチャーセンター、新宿教室)が3月30日に行われたので参加しました。スコットランドのスカイ島で見られるケルトの文様と京都で400年続く唐紙の工房の繋ぐ文様について大変興味深いお話を伺うことができました。

映画「フィシスの波文」が生まれたきっかけ

 

「フィシス」とはギリシャ語で「あるがままの自然」それも、自然(じねん)と読む思想に近い意味なのだそう。今回のオンライン講座で登壇された映画「フィシスの波紋」のプロデューサーである河合早苗さんはスコットランドのスカイ島でケルト文様を目にした時に、遠く離れたアイヌの文様を思い出したそうで、これが映画「フィシスの波文」制作のきっかけの一つだそうです。

実は私にもこのような経験はあって、もしかしたら皆さまも同様の経験をされているかもしれません。ヨーロッパの教会で目にした文様やアジアの仏塔で目にする文様は宗教や民族にかかわらず、どこか似ていたり、懐かしさを感じたりすることが多々あります。登壇された多摩美術大学名誉教授の鶴岡真弓先生によれば、「世界中で人々は祈りを捧げたり、自然の美しさを表現することで同時多発的に似たような文様が生まれ、それぞれに影響し合っている」とおっしゃっていて、深く納得しました。

京都の「唐長」から始まり広がる文様の世界

映画に登場する京都の「唐長」は400年続く唐紙を制作する工房です。江戸時代から現在まで所有する650枚の板木を使用し、手刷りで和紙に文様を写し取り、美しい襖紙を製作しています。仏閣寺院や旅館などにも収められ、現存する最古と言われる唐紙が収められている養源院も映画に登場します。

 

世界中で流行した「唐草文様」から読み解く文様の意味

今回の講座では1300年代には英語で「アラベスク」と呼ばれ世界中で大流行し、世界の広い範囲で見られる「唐草文様」に注目してお話が進みました。江戸時代から脈々と伝わる唐長文様の一つである「天神唐草」とトレドのエレオノーラというメディチ家に嫁いだスペイン人女性の肖像画(ウフィツィ美術館蔵)に描かれたドレスの文様が「唐草文様」であり、エレオノーラがご自分の棺に入れるほど大切にしていたドレスなのだそう。これは肖像画に描かれている真珠もそうであるように、当時ヨーロッパにはなかった異国的なもの、東洋的なものが生命力と光を吹き込んでくれる美しいものであるという考えがあったからだそう。

インドにも広がる文様の世界

「文様」とは森羅万象を映し出した美である、とおっしゃる鶴岡真弓先生。WELLBEING TOKYOで扱っているインドのアンティークのテキスタイルやオブジェにも、昔の人々が祈りを込めて織り込んだり、描いたりした文様が見て取れます。民族や宗教、国、そして時代も超えて人々が自然、つまりフィシスに感じとる美には共通するものがあり普遍的な美しさがあります。フィシスがデザインされ、現代にも受け継がれ、そして続いていくのではないでしょうか。

映画「フィシスの波文」に登場する人々

映画では鶴岡真弓先生をはじめ、唐長の11代目千田ご夫妻、エルメスのアーティスティックディレクターのピエール=アレクシィ・デュマさん、デザイナーの皆川明さん、美術家の戸村浩さん、アイヌ漁師の門別徳司さん、アイヌ伝統工芸師の貝沢貢男さんが出演されるそうで、文様を通じてどんな繋がりが見えてくるのかとても楽しみです。

映画「フィシスの波文」は4月6日公開です。

映画の詳しい内容、上映についてはこちらをご覧ください。

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