[第2回] 粉彩扒花の名匠と継承〜張文月と墨舎柴窯、技と表現の違い〜

本コラムは景徳鎮の伝統技法「粉彩扒花」の器について、全3回にわたって紐解くシリーズです。
第2回では、粉彩扒花という希少な技法を今日まで守り伝えてきた名匠張文月氏をはじめ、作品に見られる「表現のグレード」についてご紹介します。

極細彫りが生む立体美 ― 張文月の扒花表現

こちらの背の高い三つの聞香杯は、扒花技法で名高い張文月氏による作品です。張氏は、中国の無形文化遺産「景徳鎮手工制磁技芸」の代表的な伝承者であり、扒花の第5世代を継ぐ重要な人物として知られています。78歳となった現在も創作を続け、“扒花大王”の異名をもつ名工です。

受け継ぎ手の少ない希少工芸であることから、その作品はコレクター間でも高い評価を得ており、博物館収蔵品や国賓への贈答品として選ばれています。張氏による粉彩扒花の聞香杯は、色釉の表面を極細の彫りで削り出し、下から白胎を浮かび上がらせるという、扒花の中でも最も高度な技法を用いて制作されています。光が当たると文様が刺繍やレースのように立ち上がり、静かな陰影と躍動感があらわれるのが魅力です。

墨舎柴窯 ― 粉彩扒花を現代に伝える景徳鎮の名窯

一方で、粉彩扒花の伝統を現代へとつなぐブランドとして知られているのが「墨舎柴窯」です。天然鉱石による釉薬づくりから絵付けまで一貫して手がけ、“本物の美”と真摯に向き合う姿勢を貫いてきました。その作品は北京故宮や江西省博物館、景徳鎮美術館などに収蔵され、景徳鎮市無形文化遺産「柴窯青花」の生産的保護モデル基地としても認定されています。コレクターの人気も高く、創業以来受け継がれてきた「古きを敬いながら、新しい美を生む」という家訓は、器の佇まいそのものに静かに表れています。

手彫りと機械彫 ― 粉彩扒花における表現のグラデーション

近年では、すべてを手彫りで行う作品に加え、一部に機械彫を取り入れた表現も見られるようになりました。これは量産のためではなく、紋様の立体感や奥行きを高めるための選択であり、手描きの粉彩と重ねることで新たな表情を生み出します。粉彩扒花の世界には、手仕事の密度や工程の深さによるグラデーションが存在します。その違いを知ることで、器を見る目はより豊かになり、自分自身の美意識に合った一客と出会う楽しみも、いっそう深まっていくのです。

次回予告|香りを聞くための茶器「聞香杯」

こうした高度な技と美意識は、実際の暮らしの中で、どのような器として楽しむことができるのでしょうか。最終回では、香りを「飲む」のではなく「聞く」ために生まれた、特別な茶器「聞香杯」についてご紹介します。

粉彩扒花の技法について詳しく知りたい方は前回のコラムをご覧ください。

ショールームのご案内|粉彩扒花を実物で体感する

WELLBEING TOKYOのショールーム(予約制)では作品を実際に手に取ってご覧いただけます。

写真では伝えきれない、紋様が光を含んでふわりと浮かび上がる様子や、手に触れたときの温かさ、そして静かに深まる色の重なりなど、作品本来の魅力は、実際に手に取ってこそ感じていただけたら嬉しいです。ぜひギャラリーにて、ひとつひとつの表情をご体感ください。

また、展示会情報などはインスタグラムでもお知らせする予定です。是非フォローして下さいね。

WELLBEING TOKYO ショールーム

【時間】11:00~17:00 完全予約制

【場所】東京都港区六本木

▼各日定員制

A.11:00~12:30

B.12:30~14:00

C.14:00~15:30

D.15:30~17:00

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ライター:Mayo Ishii
テーブルコーディネートディプロマ取得。アフリカ、ヨーロッパ、東南アジアに滞在。世界中の手工芸品や文化をテーブルに取り入れることが好き。現在インド・チェンナイ在住。

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