甦る白磁の奇跡〜世界最高峰の景徳鎮が六本木に集結〜

一度は失われた「世界最高峰」の技術を、今、誰が受け継いでいるのか――。
“磁器の国の王冠に輝く宝石”と評される景徳鎮。その歴史と美を、現代に蘇らせた巨匠たちの作品が、このたび東京・六本木のギャラリー「クラージュ・ド・ヴィーブル」に集います。

世界中に広がった「海上陶磁の道」の起点でもある景徳鎮。景徳鎮の「青花」「玲瓏」「粉彩」「色釉」の四大伝統磁器は手仕事の極みと評されています。

WELLBEING TOKYO代表の谷家理香さんが、日本の漆芸家・村瀬治兵衛氏とともに景徳鎮を訪れ、伝統の釜びらきに立ち会った後に、再び現地を訪れ、世界に誇る現代景徳鎮の作家たちの作品を心を込めて選び抜きました。

世界が憧れた「景徳鎮」の復興への挑戦

かつて世界中の王侯貴族を魅了した「白磁の聖地」とも言われる景徳鎮。地中から発見された磁器片は、故宮博物院に所蔵される皇室磁器と同じ窯で焼かれたもので、一説には実にその約95%が景徳鎮で作られたともされており、受け継がれた美と技の深さを物語っています。

その精緻を極めた技術は、文化大革命(1966年から1976年)の混乱の中で一度失われ、多くの財宝が日本や台湾へと流出してしまいました。明代永楽年間(1403年 – 1424年)に頂点を極めた技術はもはや伝説と化していました。
しかし、景徳鎮の誇りと技術を取り戻すべく立ち上がったのが、李毛仔(リ・マオザイ)氏、そして黄一龍(ファン・イーロン)氏ら、現代の名工たちです。

薪窯の炎と鉱物が織りなす、白磁の奇跡 —— 李毛仔

景徳鎮の磁器の中でも、特に「釉里紅」や「郎紅」「霽紅」といった紅釉磁器は、かつて皇帝に愛された色として広く知られ、その製法は長らく失われた“幻の技”とされてきました。

1954年、景徳鎮に生まれた李毛仔氏は、その技術の復元に生涯を捧げてきた名匠です。数十年にわたり、天然の鉱物を集め、伝統の「72の工程」を忠実に再現し、2008年には薪窯(柴窯)を用いた精緻な釉里紅と紅釉シリーズの再現に成功。さらに、透き通るような白磁や、鉱物顔料による色鮮やかな絵付けを実現しました。

李毛仔氏が30年以上にわたって集めた希少な天然鉱物は、極めて高度な技術を必要とし、彼の作品は卵の殻のように薄く、限界まで透けるほどに仕上げられた器を生み出しています。薪窯の繊細な火加減を操りながら、奇跡的な色彩と透明感を生み出すその技術は、まさに現代の奇跡とも称賛されています。

伝統と革新を併せ持つ景徳鎮の巨匠

李毛仔氏は、景徳鎮の伝統を未来へと繋ぐ革新者として、中国国内では「人間国宝」とも称されるほど高く評価されています。彼の作品は、香港、日本、アメリカ、マレーシアなどでコレクションされ、世界中の陶磁器愛好家から熱い支持を受け続けています。

ほぼ失われた景徳鎮の多くの技術を復興させ、伝統を守りながらも、インターネットオークションなど新たな方法を駆使して作品を世界中に届けるなど、革新性を兼ね備えた作家でもあります。伝統と未来、両方に開かれた稀有な才能が、陶磁器の愛好家たちを魅了し続けています。

村瀬治兵衛氏とともに立ち会った「釜びらき」

谷家理香さんは、日本の漆芸家・村瀬治兵衛氏とともに景徳鎮を訪れ、李毛仔氏の釜びらきに立ち会いました。
窯から取り出される一つ一つの器には、大地と火と人のエネルギーが込められています。
その後、谷家さんは再び景徳鎮を訪れ、心から納得できる作品だけを自らの目で選び抜きました。

黄一龍―、光と陰影を操る浮き彫りの妙技

黄一龍氏は、世界の陶磁浮彫分野で革新をもたらした作家として高く評価されています。乾隆期の伝統的な浮彫技法を基に、独自に多層高浮彫を開発。玉のような白土に天然鉱石由来の七彩瑪瑙を加え、1320度で焼成することで、まるで生きた無形文化財のような作品を生み出しています。

その最大の特徴は、極限まで薄く仕上げた器に施された精緻な浮彫と立体的な彩色。光にかざすと、彫刻と彩色が浮かび上がり、器が息づいているかのような表情を見せます。黄一龍氏の作品は、中国国内外の博物館や展覧会で高く評価され続けています。

李毛仔氏の伝統的な薪窯焼成とは異なり、黄一龍氏は現代窯を使用し、景徳鎮の伝統を新たな時代に昇華させています。その革新性が世界中の陶磁器愛好家を魅了しています。

繊細な浮彫と透ける器

谷家理香さんによれば、「大きな皿にもこの技法が施され、透ける様子が非常に美しく、高度な技術が一目でわかる」とのこと。

黄一龍氏の作品には静けさと華やかさ、伝統と現代が絶妙に溶け合っています。

現代景徳鎮の新たなアイコンとして国際的にも高い注目を集めています。

東京・六本木で出会う、奇跡の磁器たち

2025年5月3日から11日まで、東京・六本木の「Courage de Vivre」にて、李毛仔氏、黄一龍氏をはじめとする世界で注目される現代景徳鎮の作家たちの作品を展示いたします。

自然素材だけで彩られた、透明感あふれる磁器の数々。
そして日本の漆芸と出会い、新たなシノワズリを提案する唯一無二の空間となることでしょう。

この貴重な機会に是非お立ち寄りください。

皆様のお越しをお待ちしております。

ライター:Mayo Ishii
テーブルコーディネートディプロマ取得。アフリカ、ヨーロッパ、東南アジアに滞在。世界中の手工芸品や文化をテーブルに取り入れることが好き。現在インド・チェンナイ在住。

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